2011年3月9日水曜日

DSC(Dragstar Classic400)のインプレ~エンジン編2~

さて、先日の日記に書いたとおり、「馬力」と「トルク」について書いてみたいと思います。

書く前に、いろいろ考えたのですが、かなりの長文になると思います…。
加えて、DSCに関する事は、ほとんど出てこないと思います(笑)
逆に言うと、DSCだけの事ではなく、バイク全般(車も含めて)の、ちょっとした物理になると思います。

私は、高卒です。専門的にその手の分野を勉強したわけではありませんので、一般的な知識(義務教育レベル)での話で進めていきたいと思います。極力、分かりやすく、噛み砕いて書いていきたいと思いますので、長文になります(笑)

「ややこしい話は嫌い」という方もいらっしゃると思いますが、バイク(車)好きな方でしたら、理解できれば楽しいと思います。
「数字を見るだけで、アレルギーが(笑)」
という方は、ここから下は読まない方がいいと思います(笑)

では、いきますね~。

バイクや車のカタログを見た時に、必ず書いてある「馬力」と「トルク」。
何となく分かるような?分からないような?
特に「馬力」についてハッキリと説明する事はできますか?ここでは、物理の面から見た「馬力」と「トルク」についての説明をしていきます。
最初に答えをい書いておきますね。
「1馬力とは、質量75kgのものを、1秒で1m持ち上げたときの仕事率のこと。」
赤い字の部分が、間違えやすいポイントです。では、順を追って書いてきますね。

~MKS系単位~
最初に覚えてほしい事です。(難しくないので、敬遠しないで下さいね…)
物理学の世界では、一般的に「MKS系単位」というものを使います。これは、
・長さには「m(メートル)」
・質量には「kg(キログラム)」
・時間には「s(秒)」
を使いましょう、という事です。それだけの事(笑)
ですので、60km/h(時速60km)は、物理の世界(MKS系単位)では、
60km=60000m
1h=3600s
60000m÷3600s≒16.67m/s
よって、「16.67m/s」と表記するのが一般的です。

~単位について~
上に書いたとおり、単位は「MKS系単位」で表記しますが、その単位についての約束事もあります。

・違う単位のものを足したり、引いたりできない
当たり前のことですが…(笑)
100m+50kg
なんて式があっても、計算できないですし、答えの「150」も、何の数字か分かりません(笑)
当たり前のことですが、一応書いておきます。(掛け算・割り算はできます。)

・単位の組み合わせ
例えば、「km/h」ですが、一般的に速度計に書かれている速度の単位ですね。
これは、距離(km)を時間(h)で割った(/)数値なので、「km/h」です。つまり、「/」の部分は、「割り算をしましたよ~」って意味です。
では、掛け算はどうなるか?
自分でバイクをカスタムする人は、サービスマニュアルで「○○Nm」「○○kg・m」といった締め付けトルクの表記を見た事があると思います。この「・」が「掛け算ですよ~」っていう意味です。
「Nm」と「kg・m」では「・」があったり無かったりですね。この「・」は省略されることも多いです。
ややこしいので、ここでは全て「・」を付けますね。
乱暴にまとめると、「単位を見れば、どんな計算をしたのか」が分かるって事です。
無意味に公式を覚える手間が減ると思います(笑)

~質量と力の大きさ~
「質量」と「力の大きさ」のちがいについてです。
「こんな話、関係あるのかよ~」
って思うかもしれませんが、最初を間違えると、全て間違えるんで(笑)、当たり前の事も含めて書きますね。(だから長文になるんですが…。)

1つ例を書きますね。
「私が60kgの重さの荷物を持ち上げました。」
この時、私は「60kg」の力を出していた。

上の文章に違和感を感じますか?特に違和感を感じないと思いますが、コレが間違ってます。
何が間違っているのか?順を追って書いていきますね~。

まずは、「質量」についてです。
質量とは、物体の絶対的な重さを示した数値です。体重が80kgの私の質量は「80kg」です。当たり前ですね(笑)
では、80kgの私が無重力の宇宙に行ったら、質量はどうなるか?
当然「80kg」です。無重力だから「0kg」にはなりません。
同様に、私が月に行っても、質量は1/6にはなりません。「80kg」です。
という訳で、質量とは、物体の絶対的な重さを示した数値という事は理解して頂けると思います。

次に「力の大きさ」についてです。
よく勘違いする原因として、物理学用語で、「力の大きさ」の事を「重さ」と書くことがあります。
「重さ=質量」と思ってしまうと、間違ってしまいます。ややこしいですね(笑)
なので、ここでは「力の大きさ」の事を「重さ」とは書きません。

では「力の大きさ」の単位は何なのか?
「kgf」
になります。質量の単位「kg」に、力という意味の「f(force)」を加えた単位です。
読み方は「キログラム重(じゅう)」です。

ここで、上に書いた例について、何が間違ってるのかお気づきでしょうか?

「私が60kgの重さの荷物を持ち上げました。」
この時、私は「60kg」の力を出していた。

正しくは、
私は「60kgf」の力を出していた。
ですね。屁理屈のように聞こえるかもしれませんが、単位を正しく理解しないと、後から混乱する原因になりますので…(笑)

~速度~
こんな事を書く必要はないと思いますが…。
大雑把に書くと、速度計で示されている数値です。
1点だけ注意してほしいのが、
速度計で示されているのは「km/h(キロメートル毎時)」ですが、
ここでは「m/s(メートル毎秒)」で表記します。

~加速度~
1秒ごとに、「1.39m/s」ずつ速度が上がっていく。(1.39m/s≒5km/h)
「0m/s(停止状態)」からスタートすると、1秒後には「1.39m/s」になり、2秒後には「2.78m/s」になり、10秒後には「13.9m/s」になる。
こんな加速の度合いを表現する単位が「加速度」です。
単位は「m/s²(メートル毎秒毎秒)」です。分解すると「m/s/s」になります。これは「速度(m/s)」を「時間(s)」で割りました、って事ですね。つまり、時間あたりの速度の変化を表したもの、となります。
「m/s/s」でも良いのですが、見やすく「m/s²」と書くのが一般的です。

この数値が大きい程、強い加速になる、と感覚的に分かって頂ければOKだと思います。
ちなみに「減速度」というのはありません。減速は、「-(マイナス)○○m/s²」という負の加速度で表します。

この加速度の単位「m/s²」は普段はあまり見かけない単位かもしれませんが、こんな数字を見た事はないでしょうか?(少なくとも義務教育の範囲で1度は見てると思いますが…)
「9.8m/s²」
覚えてますか?
これは重力による加速度(重力加速度)です。いわゆる「1G」と言われてるものです。
よって、1G=9.8m/s²であり、2G=19.6m/s²になります。

ここまではOKですか?まだまだ続きます(笑)

~N(ニュートン)~
またまた違う単位の話です。
「N(ニュートン)」
普通に生活していたら、まず使う事はないと思います。
「3Nで肩たたきをお願いします。」
こんな会話は聞いた事がありませんね(笑)

では「N」とは、何の単位なのか?
「力の大きさ」の単位です。さっき「力の大きさ」の単位として「kgf」の事を書いたばかりですが、「N」も同じく「力の大きさ」の単位です。物理学の世界では「kgf」より「N」の方が一般的かと思います。
「m(メートル」「mile(マイル)」「yard(ヤード)」etc、長さにも色んな書き方があるのと同じです。

さて「ニュートン」と聞くと、何を思い出すでしょうか?
大抵の方は、「万有引力」の「アイザック・ニュートン」を思い出すのではないでしょうか?
この単位の語源は、その「ニュートン」です。

では「N」を「MKS系単位」にするとどうなるか?
N=kg・m/s²(キログラム メートル毎秒毎秒)
となります。言葉で書くと、
質量(kg)×加速度(m/s²)
ですね。

空気抵抗や摩擦抵抗の無い水平な場所(物理でよく使われる前提)で、
1kgのものを、水平方向(これ重要)に1m/s²の加速度で加速させる力の大きさを1Nといいます。

つまり、100kgの物体を1m/s²で加速させる力は「100N」であり、
同じ「100N」の力で、50kgの物体では2m/s²で加速させる事ができる、となります。
バイクでいうと、同じ力の大きさなら、車体が軽い方が強い加速度を得られる、って事ですね。
感覚的に知ってる事だと思いますが…(笑)

ちょっとややこしい話になります。上の赤字で書いてある「水平方向」について書きたいと思います。
だいぶ上の方に書いた「馬力」についての説明では、「持ち上げた」(つまり垂直方向)でしたが、「N」の説明では「水平方向」です。この違いは何?となりますね。
少しの間、ややこしい話にお付き合い下さい。(極力、分かりやすく書きますので…)

まずは、1kgの物体を手に持ってると仮定して下さい。
手を離すと、物体は落下しますね(当然ですね)
この時、物体は重力に従って、垂直方向に落下します。
この物体にかかる、力の大きさは、
1kg(物体の質量)×9.8m/s²(重力加速度)=9.8kg・m/s²
つまり「9.8N」です。これが「1kgf」です。よって
1kgf=9.8N
となります。

続いて、水平方向についてです。(ここでも、空気抵抗・摩擦は考えない、水平な場所です。)
同じく、1kgの物体に力を加えるわけですが、この1kgの物体に「9.8m/s²」で加速する力を加えた場合、
1kg(物体の質量)×9.8m/s²(加速度)=9.8kg・m/s²
よって「9.8N」です。
上に書いた、垂直方向の時と同じ計算になります。

つまり、1kgの物体を自然落下させた場合と、9.8N(1kgf)で加速させた場合の運動は垂直・水平の違いはありますが、同じ運動になります。

ちょっと、ややこしかったと思いますが「ふ~ん」という感じで流してもらっても結構です(笑)

~J(ジュール)~
またまた違う単位が出てきました(笑)
趣味でエアーガンを持ってる人なら聞いた事がある単位かもしれません。(銃刀法改正で0.98J以上のエアーガンは所持できなくなったので…)

この「J(ジュール)」は、仕事の大きさを表す単位です。
MKS系単位で表すと、
J=N・m(ニュートン メートル)
N・m=kg・m²/s²(キログラム メートル メートル 毎秒 毎秒)
となります。意味不明です…(笑)

言葉に直します。
質量(kg)×加速度(m/s²)×距離(m)
となり、質量×加速度は「力の大きさ」なので、
力の大きさ×距離
となります。

つまり、1Nの力で1m運動すると、1N・m(1J)になります。

~トルク(N・m)~
ようやくトルクまで、辿り着きました…(笑)
上の「J」の説明で「N・m」が出てきたので、「おっ」と思った方もいらっしゃったと思いますが。

そうです。トルクの単位は「N・m(ニュートン メートル」ですね。
トルクとは、「軸が回転するときの力の大きさ」です。バイクのスペックにでている数値はクランク軸でのトルクなので、そのまま「クランクが回転するときの力の大きさ」と考えてもらって構いません。

では、1N・mってどれくらいの力の大きさなのか?
実際はこんな事はできませんが、クランク軸に1mの長さのレンチを付けたと考えて下さい。
そのレンチの先端に、1kgの物体を付けて、1m/s²で加速させる力が、1N・mです。

分かりにくいですか?
では、実車の数値を出しますね。私のDSCの最大トルクは「32N・m(3.2kgf・m)」です。
このDSCのクランク軸に、先ほどと同じように1mのレンチを付けた場合、3.2kgの物体を1m/s²で加速させる力を持ちます。
物体ではなく、先端を手で持った場合、3.2kgf以上の力でおさえてしまえば(3.2kgと考えてもらってOKです。)、エンジンは止まります。
「えっ、エンジンってそんなに力がないの?」
と思われるでしょうが、計算上はそんなもんです(笑)

そんな力を、トランスミッションを用いて回転数を変換して、あの車体を走らせています。
この時、
クランク軸トルク×クランク軸回転数=一定
という方式がありますが、今日はそこまで書きません。後日にします。

~馬力~
いよいよ馬力です。この馬力に関しては、
「PS」と「kW(キロワット)」の2種類の表記がりますね。なじみが深いのは「PS」だと思いますが、「SI単位(国際的に統一しましょうね~、って単位)」では「kW」です。
ちなみに、1PS=0.735kWです。

んじゃ「kW」ってなんでしょう?何となく「W」の1000倍(k)という事は分かってもらえると思います。
では「W(ワット)」って何?分解すると、

W=J/s

となります。更にMKS系単位にすると、

J/s=kg・m²/s³(キログラム メートル メートル 毎秒 毎秒 毎秒)

となります。もはや意味不明です…(笑)
簡単に言うと、「J(仕事の大きさ)」を「s(時間)」で割った数値。
つまり、「時間当たりの仕事の大きさ」になります。う~ん、これでも意味不明ですね(笑)
では、上記のMKS系単位の表記を変換してみますね。

kg・m²/s³=kg・m/s²・m/s

となります。これを言葉で書きますね。

質量(kg)×加速度(m/s²)×速度(m/s)

となります。ちょっとは分かりやすくなりましたか?
さて、ここで数値をあてはめてみますね。ず~と上に書いた、
「1馬力とは、質量75kgのものを、1秒で1m持ち上げたときの仕事率のこと。」
を上の式に当てはめます。
ここで重要なのが、「1秒で1m持ち上げた」です。この部分が「加速度」になるのですが、持ち上げたのですから、重力に逆らっている事になります。よって「9.8m/s²」です。これが水平方向に動かしたら「1m/s²」になるので、「持ち上げた」が重要だと分かって頂けると思います。
では計算します。

質量(75kg)×加速度(9.8m/s²)×速度(1m/s)=735kg・m/s²・m/s
735kg・m/s²・m/s=735kg・m²/s³
735kg・m²/s³=735W
よって、1PS(馬力)=735W(0.735kW)

と、こういう計算になります。
こんな式なんて、どうでもいいと思うかも知れませんが、
質量(kg)×加速度(m/s²)×速度(m/s)
これって結構重要だと思います。この式から、日頃感覚的に分かってる事が証明できます。

馬力が一定なら
・質量が軽い方が加速度・速度が大きくなる。
・速度が低い時の方が加速度が高くなる。
なんて事が、この式から考えられますね。

ずいぶん長くなりました…(笑)
とりあえず今日はここまでにします。DSCのインプレはどこへ行ったのか(笑)?
ちょっと深く掘り下げすぎましたかね?

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